大臼歯（奥歯）の治療でかぶせ物をする時、これまで保険診療の対応となるのは金属の銀歯だけでした。天然の歯に近い白い色を希望するなら自費診療でセラミックにするしかありませんでした。しかし最近、歯科用プラスチックのレジンとセラミックを使った「ハイブリッドレジン」のかぶせ物が開発されました。
この「CAD/CAM（キャドキャム）冠」は保険適用され、比較的安価で白いかぶせ物を入れられるようになりました。ただ、強い力がかかると割れるリスクがあり、過度な負荷がかからない一部の大臼歯にしか使用が認められませんでした。
昨年12月、全ての大臼歯に使える「PEEK冠」が保険適用になりました。PEEKとは「ポリエーテルエーテルケトン」というプラスチック材料で、医療分野でカテーテルや体内インプラントなどに利用されています。ハイブリッドレジンに比べて強度に優れているので、銀歯とほぼ同じ条件で使用できます。
一方で欠点もあります。「審美性」です。PEEK冠はアイボリー色で光透過性がないため、ハイブリッドレジンより歯の色としてはやや不自然に感じられます。目立ちにくい大臼歯にしか適用されないとはいえ、気になる方がいるかもしれません。その場合はこれまで通り、銀歯か自費診療のセラミックを選択することになります。
いずれにしろ、大臼歯のかぶせ物に保険診療で銀歯以外の選択肢が増えたのは患者さんにとっていいことだと思います。特に金属アレルギーのある方には有用です。治療でかぶせ物をする際には、ぜひ歯科医師に相談してみてください。
（鹿児島県歯科医師会 情報・対外PR委員 中島 厚生）
大臼歯の治療 かぶせ物の選択肢広がる
