歯周病が糖尿病や狭心症、心筋梗塞、早産、低体重児出産など全身に与える影響は知られていると思いますが、かみ合わせ(咬合)も全身に影響することをご存じでしょうか?
影響が及ぶものを列記すると、脳、肺、姿勢維持、身体運動、顎関節、そしゃくの時に使う筋肉、顔貌(顔立ち)、頭位、全身姿勢、体液循環などが挙げられ、これらはQOL(生活の質)、人生の満足度、さらには寿命にも関わります。
今回は、脳に関して具体的に説明します。咬合は、要介護となり健康寿命を短くする要因の上位にあげられる認知症と深く関わりがあります。認知症の約7割がアルツハイマー型認知症で、これは以上タンパク質であるアミロイドベータ(AB)やタウ(線維化したタンパク質)が脳にたまって、神経細胞が死んで発症します。
奥歯をなくしたラットはABを大量に増加させ、その量は健常なラットよりも4週間で平均3倍、最高8倍にも上ります。逆に奥歯を治療すると脳内のABを減少させ、4週間後には健常のラットと同じになるので、咬合の改善はアルツハイマー病の有効な治療法となる可能性があります。
65歳以上で歯がほとんどなく義歯を使っていない人は、歯が20本以上残っている人や歯がほとんどなくても義歯をきちんと使っている人よりも4年後に認知症認定率が約2倍となるデータも出ています。また、学習・記憶能力とも関連性があります。奥歯を抜いたマウスの学習・記憶能力は、奥歯のあるマウスと比較して4ヶ月後には有意に低下し、記憶をつかさどる海馬の脳神経細胞も明らかに減少していたという実験結果もあります。
自分の歯がベストですが、義歯を使ってでも咬合を回復することが大切です。その際にあごがズレたままで咬合させても十分な機能回復はできないこともあるので、全顎的な治療になることもあります。
認知症との関連知って かみ合わせ